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【現代文】語彙力アップのために現代文キーワード集が適さない理由と、語彙力を高める学習法を東大生が解説

更新日:2026.06.14

「現代文の成績を上げるために、まずは現代文のキーワード集を完璧にしよう」

そう意気込んで、英単語と同じように赤シートで意味を隠し、必死に暗記していませんか?

実は、その学習法こそが、あなたの読解力を停滞させている最大の原因かもしれません。この記事では、東大生をはじめとする「現代文が得意な人」が、なぜ現代文キーワード集を「暗記」の対象として見ていないのか、そして何を意識すれば語彙力アップを達成できるのかについて、お伝えします。

名前:葛岡光太郎

所属:東京大学経済学部経済学科

趣味:音楽を聞くこと、読書、囲碁

大学受験現代文で求められている語彙レベル

一般に、大学受験現代文で求められている語彙レベルは、「新書」レベルと言えるでしょう。

「新書」とは、特定のテーマ(学問、教養、社会時評など)をコンパクトにまとめたシリーズ形式の書籍のことです。一般的には、ある学問分野の入門書として位置づけられることが多いですが、第一線の研究者が書くことがほとんどであるため、一般の大人にとってもかなり歯ごたえのある難しさと言えます。実際に大学入試で出題される文章の中にも、新書から出題されたものは数多くあります。

出典:https://www.kodansha.co.jp/book/products/0000320583

2019年度 東京大学入試で出題された文章の原本

いずれにせよ、このレベルの語彙力があれば、一部の専門書を除く一般的な書店で売られている書籍の大半は、読むことができます。逆に言えば、それだけ高いレベルを求められているということです。

具体的には、例えば以下のような語彙を正しく捉えていることが求められます。

  • アイデンティティ
  • 逆説
  • 普遍

どれも非常に抽象的で、日常会話の中で使うことは稀である一方、評論文では最重要語彙として挙げられるものでしょう。

2026年大学入学共通テストに出題された評論文には、以下のような単語が(注)なしで使われていました。

  • 生起する
  • 共同体
  • 受動的
  • 超越的

ここまでに挙げてきた7つの語彙のうち、自力で意味を説明できるものはいくつあったでしょうか。全てを完璧に説明することは難しいですが、各語彙に対して最低でもイメージを言語化できる必要はあると言えます。

さて、これらの単語を見て「あ、現代文キーワード集で見たことある!」と思った人も多いはずです。でも、キーワード集の情報をもとにして、例えば共通テストなどの問題を解く際に、問題なく読解を進めることが出来るでしょうか?

現代文キーワード集だけでは、語彙力強化が不十分である理由

英単語や古語単語と異なり、暗記として覚えるという性質でもない

まず、私たちがっ先に捨てるべきは「現代文の語彙=英単語と同じように覚えればいい」という思い込みです。

英単語や古文単語の学習の基本は、いわば「翻訳」です。

apple =「りんご」、をかし =「趣がある」というように、未知の言葉を既知の日本語に置き換える作業がメインとなります。極論、単語帳の左側と右側を一対一で結びつければ、それだけで読解の大きな助けになります。

しかし、現代文のキーワードは、すでに皆さんが知っている「日本語」で書かれています。それなのに難しく感じるのは、それが単なる「言葉」ではなく、「概念(物事の捉え方)」だからです。

例えば、キーワード集で「抽象」という言葉を調べると、「事物からある性質を抜き出し、他を捨てること」といった説明が出てきます。これを暗記したとして、実際の入試問題で次のような一文に出会ったとき、あなたは即座に内容をイメージできるでしょうか?

「近代科学は、個別の身体性を捨象することで、普遍的な法則を確立した。」

ここで求められているのは、「捨象」という言葉の意味を思い出すことではありません。

「目の前にある一人ひとりの生身の体(具体的な違い)を無視して、データや数値として扱うことで、誰にでも当てはまるルールを作ったんだな」と、言葉の背景にある「思考のプロセス」を再現することなのです。

現代文の語彙は、パズルの一片を埋めるような「知識」ではなく、世界を捉える枠組みに近いものがあります。単語と意味を機械的に紐付ける「暗記」の延長線上に、枠組みという抽象的な捉え方の習得はありません。

キーワード集をいくらめくっても成績が伸びない1つの理由は、この暗記の性質の違いに無自覚なまま、作業として言葉をなぞってしまっている点です。

「知っている」と「使える」の巨大なギャップ

キーワード集の赤シート学習で、語彙の意味を答えられるようになった。しかし、いざ模試の文章を開くと、さっぱり内容が入ってこない……。

このような悩みを持つ受験生に共通しているのが、「知っている」と「使える」の間にある溝です。

現代文における「語彙が使える」とは、その言葉が文章という固有の文脈の中で果たしている役割や論理的な方向性を見抜けることを指します。

例えば、「アイデンティティ」という言葉を例にとってみましょう。

キーワード集的な知識(知っている状態)では、「自己同一性=自分は自分であるという確信」と答えることができるはずです。

しかし、入試レベルの読解で求められる使える状態とは、文中に「アイデンティティの揺らぎ」という言葉が出てきた瞬間に、

「あ、これは『自分とは何者か』という軸が社会の中で不安定になっているという、近代的な悩みの話だな」

「この後には、その不安定さを解消しようとする筆者の主張や、社会の構造的な問題が続くはずだ」

という文脈の予測ができる状態を指します。

英単語のように「意味を変換する」だけでは、文章の構造は見えてきません

実際の文章の中でその言葉がどのように「動いている」のか。その実例に数多く触れる経験がない限り、キーワード集の知識は「死んだ知識」のまま積み上がっていくことになります。

日常語とのズレ

三つ目の理由は、多くのキーワードが「日常でも使う言葉」であるがゆえに、かえってその正確な定義を見落としやすいという点です。

例えば、「世間」「絶対」「近代」「批判」といった言葉を、私たちは日常生活の中で何気なく使っています。しかし、入試現代文(評論文)におけるこれらの言葉の定義は、日常的なニュアンスとは大きく異なります。

例えば、「絶対」という言葉を挙げてみましょう。

日常では、「絶対正しい」など「100%間違いない」という意味で使われます。一方で、評論文では「他と比較されることなく、それ自体で存在すること」を指します。

これが、現代文における「誤読」の大きな原因の一つです。

キーワード学習で必要なのは、新しい単語を増やすこと以上に、自分がすでに持っている言葉のイメージを「学術的な定義」へと精密に修正していく作業でしょう。

しかし、キーワード集の短い説明文を確認するだけでは、日常語との微妙な、かつ決定的なズレを実感として修正するのは困難です。その言葉が実際の文章の中でどのように定義され、どのように機能しているのかを意識的に区別する訓練が不可欠なのです。

語彙力を高める国語学習法

キーワード集による「暗記」が万能でないのなら、どのようにして語彙力を高めるべきなのでしょうか。ここからは、東大生などが実践している、本質的な語彙の習得法を解説します。

理解しにくい語彙が出て来る度に調べる

古くから言い尽くされてきた方法ではありますが、分からない語彙に出会った際にそれに正対しないことには、いっこうに自分自身の語彙力を高めていくことはできません。

語彙力は、「知っている単語の数」ではなく「言葉を使いこなす思考力」と定義できます。

キーワード集を頭から順に覚えるのと、文章の中で出会った言葉を調べるのとでは、その意味合いが大きく異なります。後者には、その時々固有のコンテクストが存在し、その領域の中で意味を解釈することになるからです。

一見、応用性がないように思われますが、既に出会ったことのある語彙に対しても「この文脈ではどんな解釈をすればよいのか」という視点で調べていく中で、抽象的な次元で自分の中にその語彙の枠組みが構成されていきます。これは、キーワード集だけでは醸成されません。

ただし、キーワード集を全否定するわけでもありません。重要なのは、キーワード集を単語帳ではなく、調べるための辞書として活用することです。

勿論、インターネット検索でも問題ありません。言葉自体の意味が分かってもその文章の中で何を意味しているのか分からない場合には、(正確性に注意する必要はありますが)AIに聞くという手段も考えられます。

忘れることを恐れない

このことは、これまでとは異なり英単語などとも共通する部分です。何かを暗記するにせよ、語彙のように抽象的な枠組みを構成していくにせよ、一度で完成させることはほぼ不可能です。

一度調べて一応理解した状態になり、しばらくして忘れる。そして、別の文章で再びその言葉に出会い、「あ、これ前も調べたな」と思い出しながら引き直す。

前回調べたときとは、文脈が少しズレているかもしれませんが、そうやって様々な観点から一つの語彙に出会い、把握するという体験を続ける、このプロセスを繰り返すことが、自分の頭の中に語彙のネットワークを形成することにつながっていきます。

日常的に文章に触れる機会を増やす

今までに述べたようなサイクルをより沢山回すには、当然多くの語彙に出会う必要があります。そのために重要なことは、日常的に論理的な文章に触れる時間を増やすことです。

キーワード集に掲載されているのは、いわば「標本」のように切り出された言葉です。しかし、実際の入試問題では、それらの言葉は生き物のように文脈の中で絡み合い、論理を形作っています。

いわゆる国語の問題集でも、学校の教科書でも、先に挙げた新書でも構いません。これらに比べると、適切度合いは下がりますが、新聞でも悪くないと思います。

読むのにおすすめな、良質な文章揃いの問題集としてはこちらの「ちくま評論選」がおすすめです。

「ちくま評論選」筑摩書房

ちくまの教科書 > 筑摩書房の国語教科書 > 副教材一覧 > ちくま評論選 特設ページ 

読み散らすことは逆効果ですが、出会う文章1つ1つに対して、その時点で出来る最善の理解をすることだけを意識できれば、たとえ忘れていってしまったとしても、次々に語彙と出会う中で、「語彙力」が向上していくはずです。

まとめ

現代文の語彙力とは、決して「キーワード集という名の単語帳」を何周したかで決まるものではありません。

目の前の文章と格闘し、出会った言葉の輪郭を一つひとつ丁寧に確かめていく。その泥臭いプロセスの積み重ねこそが、あなたの思考を深め、初見の文章を読み解く基礎になるはずです。

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この記事を編集した人

ヨミサマ。編集部

東大生がつくる国語特化の個別指導塾ヨミサマ。編集部です。国語のプロフェッショナルとして、国語が苦手な生徒から東大受験対策まで述べ二千人以上を指導してきた経験を記事にしてお伝えします。完全独学で東京大学文科Ⅰ類に合格し、「成績アップは国語で決まる!」著者の神田直樹が監修しています。