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勉強法

作文が苦手な子どもに効果的な、親子で出来る練習法三選

更新日:2025.11.30

はじめに:作文が書けない……というお悩み

こんにちは!
国語特化の個別指導塾「ヨミサマ。」編集部です。ヨミサマ。では講師もしています。

筆者の私自身も授業をしていると、「作文が書けません」という声を本当によく耳にします。
この悩みは、小学生から高校生まで、学年を問わず広く見られるものです。

『作文』と聞くと、夏休みの宿題のような数百〜数千字の長文を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、生徒たちがつまずいているのは、それだけではありません。

例えば、国語の記述問題、感想文、小論文、さらには面接の志望理由書など。自分の考えや気持ちを言葉にして伝えるあらゆる場面で、生徒たちは戸惑いや苦手意識を感じています。

こうした悩みは、生徒さん本人だけでなく、保護者の方からもよく聞かれます。文章作成能力の重要性を日々職場などで実感しているからこそ、このようなお悩みが切実になるのでしょう。¥

実は私自身も、『教授にメールを書く』という日常の場面で、同じような壁にぶつかったことがあります。言いたいことはあるのに、それをシンプルに、かつ明確に言葉にできない。書けば書くほど、かえって何を伝えたいのかわからなくなる……そんな感覚に悩まされ、何度も書き直す羽目になりました。

このように、作文についてのお悩みは、皆が多かれ少なかれ持っているものです。

そこで、作文能力を伸ばしたい!と思っている人に向けて、この記事を書きます。特に、作文能力を伸ばしたい!と思っている子どもに、周りの大人はどう関わるべきかという観点から徹底的に調べ、書いていきます。

作文能力に悩んでいるお子さんをお持ちの親御さんや先生はぜひ、最後まで読んでみてください!

【そもそもの要因】作文を書くことはどうして難しいのか

生徒たちと向き合うなかで見えてきたのは、作文が書けないと感じる背景には、主に2つの課題があるということです。

  1. 思考レベルのつまずき:そもそも何も思い浮かばない
  2. 言語化レベルのつまずき:思いはあるけど言葉にできない

① 思考レベルのつまずき:そもそも何も思い浮かばない

一つめは、考えが思い浮かばないという課題です。

例えば、「親友にノートを盗まれたときのAの気持ちを考えましょう」という問題があったとします。このとき、「自分はAじゃないから気持ちなんてわかるはずがない」と考え込んでしまう生徒さんは少なくありません。

このタイプの生徒さんには、日々の出来事を言葉で整理したり、振り返ったりする経験が乏しい傾向があります。そのため、頭の中でイメージを広げたり、相手の立場に立って考えたりすることが難しいのです。

これは、書くための材料が頭の中にそもそも少ないということでもあります。

② 言語化レベルのつまずき:思いはあるけど言葉にできない

もうひとつは、考えはあるのに、うまく言葉にできないというケースです。「こんな気持ちだった」「こう思った」と何となく心の中にはあるのに、それを表すぴったりの言葉が出てこない。
語彙が足りない、文の構成がわからない、など、要因は様々ですが、こうした、“抽象的なものを言葉にする力=言語化スキル”に課題を抱えている状態です。

また、言語化のは語彙力が必須です。身につけさせる方法がわからない、という方はこちらの記事もチェックしましょう!

このように、ひと口に作文が苦手といっても、その要因は大きく分けて二つあります。どちらか一方に課題がある生徒もいれば、両方でつまずいている生徒もいます。

【環境的な要因】作文が苦手な人がどうしてこんなにも多いのか

作文が難しく感じられるのには、環境的な要因もあります。ここでは主な要因を3つご紹介します。

  1. 思考の動機づけ・材料不足
  2.  書く経験と訓練不足
  3.  読書量の減少・媒体依存

1. 思考の動機づけ・材料の不足

「そもそも何を書けばいいのかが思いつかない」という悩みを抱える生徒は非常に多くいます。

川崎医療福祉大学が行った「医療福祉系学生の文章表現に関する意識調査」では、「文章を書くことは好きですか」という問いに対して、約8割の学生が「書きたいことがない」「何を書けばいいかわからない」と回答したそうです(根来ら, 2018)。

これは、「書けない」という状態の背景に、「そもそも目的が見えていない」「なぜ書くのかが腑に落ちていない」という構造的な問題があることを示しています。

ラブレターを書くという状況を想像してみてください。この状況で、細かい文法や表現に悩む人はいても、「そもそも何を書けばいいのかが思いつかない」と悩む人はいないでしょう。ラブレターを書くことのゴールが『相手に好意がある』ことを伝えることだとわかっているからです。

このように、「誰に書くのか」や「なぜ書くのか」が明確であれば文章はスラスラ書けるものです。また、文章全体のまとまりも自ずと生まれるもので、最初に言っていることと最後に言っていることが食い違っている、などということはほとんどあり得ません。

裏返せば、目的や意義が曖昧なままでは、内容にまとまりが生まれず、説得力を持たせるのも難しくなります。その結果、筋道立った展開ができず、「とりあえずエピソードを並べただけ」の作文を書いてしまうようなことが起きるのです。

2. 書く経験・練習機会の圧倒的な不足

日本の教育では、高校・大学を通して、まとまった文章を書く機会が非常に限られています。
そのため、練習不足によって文章作成の技術が育たないばかりか、「書くのが苦手」「書きたくない」という気持ちを強めてしまうこともあります。

2018年のPISA調査では、日本の15歳の読解力が15位に後退していることが判明しました。特に「自由記述式問題」において、「根拠を示して自分の考えを説明する力」に課題があることが報告されています。

また、文部科学省は子どもたちの読解力の低下を招いたのは「読書などで長文に触れる機会が減った」ことと「SNSなどによる短文のやりとりの増加で、長文を読み書きする機会が減少したことが一因」だと言及しています(honbu_reading-comprehension)。

3. 読書量の減少と“スマホネイティブ”世代の壁

書く力と深く関係しているのが、「読む力」です。しかし近年では、スマホやSNSの普及により、長文を読む習慣そのものが失われつつあります

読書が貴重な娯楽だった時代と違い、今はスマホでゲームやショート動画が手軽に楽しめる時代です。子どもたちは、労力をかけずに没頭できるコンテンツを優先的に享受するようになりました。

スマホブームの起爆剤となったiPhoneの登場が2007年です。いまの中高生たちは、物心ついたときからスマホがある“スマホネイティブ”世代なのです。そうした環境の中で育った彼らにとって、読書は「面倒なもの」と感じられやすいのです。

原因として「論理的な文章や実用的な文章を読む経験が少ない」「自由記述式の長文・文章作成に不慣れ」なことが考えられます。

更に、学習指導要領の示す指針の問題もあります。最近の全国学力テストでは、長文読解問題が削減され、「30〜70字程度の記述」「多様な資料(グラフ・表・地図)の読み取り」が重視されるようになりました。

カリキュラム作成の指針となる学習指導要領が、読解を重要視していないことを受けての変更です。

このようなカリキュラムのもとでは、長文読解力が伸びにくくなるのも無理はありません。

【解決策】周りの大人にできること三選

では、どのようにすれば作文力を上げることができるのでしょうか。 その解決策を、『周りの大人にできること』という観点から三つお伝えします!

周りの大人に出来る3つのこと

  • 語彙力を高める二文字トレーニング
  • 表現力がぐっと高まる!“体感を伴う言葉”でのアウトプット
  • 親がお手本を見せる

【二文字トレーニング】

作文力には語彙力が不可欠です。ですが、単語帳を使ってたくさんの語彙を暗記しようとするのはおすすめしません。ただ単語をインプットしても、それをどんな場面でどう使うかを知らなければ、その言葉を自分の意図通りに操ることができないからです。

例えば「熱い」という単語を、①温度が著しく高く感じられる、②感情が高まった状態である、という辞書通りの意味で把握しているだけだったら。この場合、「熱い鉄板」という使い方はできても、「熱い試合展開」のような使い方はできません。単語は、どこでどのように使うか、という文脈とセットで覚える必要があるのです。

そこで語彙力を高めるためにおすすめなのが、日常体験の言語化から語彙を培うという訓練です。日常の体験を言語化することを通じて、実践的に言葉を獲得していくということです。

おすすめなのは、「この経験(気持ち・感覚・状況)を、短い言葉で表現してみたらどうなる?」と常に問いかけてみることです。さらに、できる子には、「これを二文字の熟語で表現すると?」という問いを投げてみるのもおすすめです。

【二文字トレーニングの置き換え例】

・誰かを強く大事に思うあたたかな気持ち → 愛情

・相手の状況や気持ちを想像して気遣うこと→配慮

経験を言葉で表現できるようになることは、言語化力の向上に直結します。さらに長い表現を二文字で簡潔に置き換えられるようになると、文章が引き締まり、より端的に思っていることを伝えられるようになるでしょう。

しかも、この二文字トレーニングは、のちのち必ず役立つ場面があります。その筆頭が、他ならぬ入試です。

例えば東京大学入試の現代文では、解答に具体的な文字数制限がある設問は一問しかありません。ところが、日本史の入試問題ではマス目状の解答欄が用意されており、六十字程度で簡潔に答えることが求められます。

このように字数制限がある設問に対する解答では、二文字トレーニングで自在に使える語彙を増やしておくことが非常に有益です。

【“体感をともなう言葉”でアウトプット】

これは私が吹奏楽部にいた頃の経験なのですが、吹奏楽部では、出したい音を詳細に言語化することが求められました。

例えば、「このシンバルはどんな音で鳴らしたいの?」と先輩に聞かれます。しかしここで「明るい音で鳴らしたいです」と言ってしまうのはもったいないのです。先輩からざっくりとした指導しかしてもらえないからです。

ひとえに明るい音と言っても、いろんな音があるはずです。「体がぽかぽかするような明るさの音」か「衝撃で心臓がばくばく鳴り出すような激しい明るさの音」かでは、出てくる音が豊かなものであるかシャープなものであるかが変わってきて、適切な鳴らし方も変わります。

このように、「明るい」「暗い」「嬉しい」「辛い」といった表現を、もう一歩進めて詳細にアウトプットする練習をすると、語彙力が高まり、表現の幅も広がります。

そしてその際、ヒントになるのが、自らの“身体的な感覚の変化”です。

心と体はセットです。心情の変化は体に変化をもたらしますし、ふつう、人は体の変化を通じて心の状態を把握します。 「手に汗握るほど熱中した」「あまりの衝撃に背中が冷たくなった」といった比喩表現を会得していけば、語彙力は高まります。

私の先輩は、指導のたびに、「その音を聞いた人は、体にどんな反応が表れると思う?」と問いかけてくれました。 その補助のおかげで私は「ドキドキする音」「ほっとする音」などの、さらに詳しい言語化ができるようになっていました。ぜひ、この『先輩』の役割を、親御さんや先生方に担ってもらいたいのです。

また、インプット(読解力)とアウトプット(伝達力)は、自転車の両輪のようなものです。アウトプットを上手にしようと心がけると、他人が何をどう表現しているかにも自然と関心が向き、インプットの力も向上していきます。

【大人の会話をたくさん浴びさせる】

ここからの話は、主に小学生までのお子さんをお持ちの保護者の方向けです。

子どもたちは、多くの場合、小さい頃から保護者の方の話を聞いて育ちます。保護者が交わす言葉のシャワーを浴びて、日本語を学び、語彙力を高めていくのです。

その言葉のシャワーの量と質は、子どもの国語力に大きな影響を与えます

子どもの語彙数は「親との対話」でこんなに変わる-ダイヤモンドオンライン)より。

表は、『3000万語の格差一赤ちゃんの脳をつくる、親と保育者の話しかけ』(ダナ・サスキンド(著)、掛札逸美(訳)、高山静子(解説)、明石書店、2018)内のデータより引用記事の著者が作成したもの。)

上記の表からもわかるように、大人の発話量と子どもの語彙数には強い相関があるのです。

また、子どもへ話しかけようと思うと、大人は大人同士の会話に比べて語彙も論理も単純化して話しがちですが、そうしたやりとりばかりでは、複雑な語彙や構造を獲得できません。できるだけ、大人同士の自然な会話を子どもに聞かせてあげるのが理想です。

私自身、小さい頃から周りの大人の会話に混ぜてもらっていたことが、語彙力や文章作成力の向上につながったという実感があります。

さらに、「読む」力を育てるには、大人が読んでいるような少し難しい本を身近に置いておくのも一つの方法です。子どもがふと手に取ることで、自然に読解力が育っていきます。

【作文の宿題にはフィードバックを!】

多くの宿題は、学力向上よりも「家庭で勉強しているかどうか」の確認という性質が強いものです。特に作文の宿題は、書いて提出してもフィードバックがないまま終わってしまうことがほとんどです。これでは、学びにはつながりません。

私は短歌を詠むサークルに入っていて、趣味で短歌を詠んでいます。そして、短歌を詠む力を大きく向上させてくれたのは『歌会』と呼ばれる批評の場でした。「この単語からはその背景情報は伝わらないよ」「助詞を『は』から『が』に変えることで、その直前の名詞の切実さが増すよ」などとサークルのメンバーが忌憚ない評価をくれることで、自分の作った短歌を客観的に見つめることができるようになったのです。

作文の宿題には、こうしたフィードバックの場がありません。その結果として日本人の大多数は、「読み手にどう伝わるか」といった客観的視点を持たないまま作文を書いてしまうようになります。

子どもが時間を費やして作文の宿題を書いても、教える側からのリアクションが無ければ、せっかくの宿題は作文能力向上の機会になり得ません。むしろ、書いた時間や労力はほとんど無駄になってしまいます。

子どもが作文を書いたら、ぜひフィードバックをしてあげましょう。「どんな風に楽しかったか、よく書けてるね」「その出来事をきっかけに、考えが変わったんだね」などと声をかけてあげるだけで、読み手を意識した文章を書く力が育まれます。 

まとめ

作文が苦手な子どもは多く、その背景には様々な要因があります。今回は、作文が苦手な子どもへの効果的な働きかけとして、三つご提案してきました。

作文が苦手な子どもへの効果的な働きかけ

  1. 語彙力を育てる「二文字トレーニング」
  2. 体感をともなう言葉でのアウトプット
  3. 大人の会話とフィードバックの力

書く力は後天的に育てることができます。大人の働きかけ次第で、子どもたちは「書くことが楽しい」と思えるようになるのです。

そして、この働きかけは、量だけでなく質も大事です。国語教育のプロの専門的知識に裏付けされたサポートを受けてみたい!と思われた方は、ぜひ国語個別指導の「ヨミサマ。」もご検討ください!

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参考文書

 医療福祉系学生の文章表現に関する意識調査-川崎医療福祉学会誌 Vol. 27 No. 2 2018 563-573
日本の15歳、読解力低下 「論理」を学び、「文学」も楽しめる教材とは-朝日新聞EduA
長文問題が消えた 全国学力テストを読み解く-朝日新聞EduA
子どもの語彙数は「親との対話」でこんなに変わる-ダイヤモンドオンライン

この記事を編集した人

ヨミサマ。編集部

東大生がつくる国語特化の個別指導塾ヨミサマ。編集部です。国語のプロフェッショナルとして、国語が苦手な生徒から東大受験対策まで述べ二千人以上を指導してきた経験を記事にしてお伝えします。完全独学で東京大学文科Ⅰ類に合格し、「成績アップは国語で決まる!」著者の神田直樹が監修しています。